「自分はうつ病かも」と悩むあなたへ。実はとても厳しいうつ病の診断基準
「自分はうつ病かもしれない」
そう不安になって受診される方は少なくありません。
SNSやネット記事で「うつ」という言葉を目にする機会が増え、
以前よりも、自分の状態を心配される方が増えている印象があります。
ただ、医学的な「うつ病」と診断されるためには、
実はいくつもの条件を満たす必要があります。
この記事では、世界的な診断基準(DSM-5)をもとに、
うつ病の診断がどのように行われるのかを、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。
① まず必要なのは「2つの必須症状」のどちらか
うつ病と診断されるには、まず次の2つのうち、
少なくとも1つが必要です。
□ 抑うつ気分(悲しい、虚しい、絶望的)
□ 興味・喜びの喪失(何をしても楽しくない)
しかも、ただ一時的にそう感じるだけでは足りません。
「2週間以上」「毎日」「ほとんど一日中」続いていることが条件です。
② 「ほとんど一日中」の本当の意味
ここは、意外と誤解されやすいポイントです。
「朝はつらいけど、夜は少し元気が出る」
「好きな動画を見ている間は少し気が紛れる」
こうした場合に、
「自分はうつ病じゃないかもしれない」と思う方もいます。
しかし医学的には、気分の波があることだけで否定はしません。
一時的な落ち込み
気分転換をすると、その間は少し楽になる
うつ病でみられる落ち込み
何をしても背景に重苦しさが残り、心が晴れない
朝に悪く、夕方に少しマシになる日内変動があっても、
「マシな時間ですら本来の自分とはほど遠い」なら、
診断上は“ほとんど一日中”とみなされます。
③ 次の関門は「9項目のうち5つ以上」
必須症状を含めて、次の9項目のうち5つ以上が必要です。
□ 抑うつ気分
□ 興味・喜びの喪失
□ 体重や食欲の変化
□ 不眠または過眠
□ 焦燥または制止
□ 疲労感・倦怠感
□ 強い罪悪感・無価値感
□ 思考力・集中力の低下
□ 死について繰り返し考える
これらが単発ではなく、同時に、2週間以上続いていることが必要です。
「昨日は眠れなかったけれど今日は眠れた」
「少し落ち込んだが、翌日にはだいぶ戻った」
という場合は、厳密な意味での診断基準からは外れることがあります。
④ いちばん大事なのは「日常生活に支障が出ているか」
実際の診療で、症状の数以上に重視するのがここです。
仕事・家事・育児・学校など、日常生活に著しい支障が出ているか
たとえば、
□ お風呂に入ることがとても高いハードルに感じる
□ 返信すべきメールの前で固まってしまう
□ 買い物に行っても判断できず立ち尽くす
□ 仕事や学校に行けない、続けられない
このように、これまでの「普通の生活」が維持できなくなっているかが、診断上とても大切です。
逆に言えば、かなりつらくても、なんとか仕事や家事をこなせている場合、
「うつ状態」ではあっても、まだ典型的な「うつ病」とは言い切れないこともあります。
⑤ ほかの病気を除外する必要もあります
うつ病の診断は、症状を並べるだけでは決まりません。
次のような別の原因を、きちんと考える必要があります。
□ 甲状腺の異常
□ 貧血など身体の病気
□ 薬やアルコールの影響
□ 適応障害など、別の精神医学的状態
特に、明確なストレスがあって、その状況から離れるとかなり改善する場合は、
「うつ病」よりも適応障害として考えることがあります。
⑥ 診断がつかなくても、つらさは本物です
ここまで読むと、
「うつ病の診断って、思った以上に厳しい」
「自分は基準を満たしていないのでは」
と感じる方もいるかもしれません。
でも、ここでいちばん大事なのは、
診断基準を満たさないからといって、つらさが軽いわけではないということです。
「診断がつかなかった=大丈夫」ではありません。
うつ病の一歩手前の状態、適応障害、あるいは診断名がつかなくても、
休養や治療が必要な“心のオーバーヒート”は確実にあります。
⑦ 死にたい気持ちがあるときは、すぐ相談してください
もし、死にたい気持ちが強い、消えてしまいたいという思いがある場合、
2週間という期間を待つ必要はありません。
この症状だけは、診断基準よりも緊急性が優先されます。
できるだけ早く、精神科・心療内科・救急などに相談してください。
まとめ
うつ病の診断には、
症状の重さ・数・期間・生活への影響という、いくつもの条件があります。
そのため、皆さんが思っている以上に、
医学的な「うつ病」の診断は厳密です。
ただし、診断がつかないからといって、
あなたのつらさが軽いわけではありません。
「なんだかいつもの自分じゃない」
そう感じた時点で、どうか一人で抱え込まずご相談ください。
