うつ病
うつ病とは
うつ病は年々患者数が増加しており、日本人の15人に1人が一生のうちで一度はかかるという調査結果が報告されています。
憂うつな気分になったり、何事に対してもやる気が出ないなどの症状が出現し、日常生活に支障をきたしてしまう病気です。
はっきりとした原因は不明ですが、現在の仮説では、仕事や人間関係のストレス、大切な人や物を失った際の喪失感、環境の変化、経済的困窮、持病などさまざまな要因が重なって発症すると考えられています。
脳内の神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンが減少したことで発症し、エネルギーが枯渇した状態とも考えられます。
うつ病の症状
◎感情や行動の症状
- 趣味が楽しめなくなった。好きなことをしてもつまらない。
- 何事にもやる気がわかない。意欲がない。
- 毎日の生活に充実感や張り合いがない。
- 気分転換ができず、悲しい気持ちや落ち込みを引きずってしまう。
- 周囲の出来事に関心や興味が持てなくなった。
- 不安や焦り、イライラ感がある。
- 集中できず、仕事でミスが増えた。
- 物忘れや不注意が増えた。
- 口数が減った。
- 外見や服装を気にしなくなった。
- お酒の量が増えた。
- なにかにつけて悪く受け取ったり、悲観的に考えてしまう。
- テレビをみなくなった。
- テレビをみてもつまらない、興味をもてなくなった。
- テレビをみていても頭に入らない。 ドラマのストーリーが頭に入らない。
- 文章を読んでいても目が文字を追うだけで頭に入らない。
- 会話についていけない、言われたことを理解できない。
- 人の話が頭に入らない。人と会うのが面倒で気後れしてしまう。
- 食事の献立が決められない。
- 優柔不断になり買い物の時間がかかるようになった 。
- 気分が落ち込む。 気持ちが晴れない。 悲しい気持ちが続いている。
- 子どもやペットがただ煩わしい。かわいいと思えなくなった。
- そわそわとして落ち着かない。身の置き場がない。
- 動作が遅くなり時間がかかる。 ぼーっと立ち尽くしてしまう。
- ぼーっとすることが多く、口数が少なくなった。
- 以前は楽にできたことが、おっくうに感じてしまう。
- 身支度に時間がかかるようになった。
- わけもなくからだが疲れている。とても疲れやすい。
- 1か月で3キロ以上体重が減った。
- 学校や会社に行きたくない。休むことが増えた。
- 自分なんて生きていても意味がないと思ってしまう。
- 自分が人の役に立つ人間と思えない。
- 周りに迷惑ばかりかけているようでつらい。
- 死んでしまいたい。 消えてしまいたい、どこかに行ってしまいたい。
- 自分を傷つけたり死ぬことを考えてしまう、その計画を立てたりする。
◎身体症状
- 頭痛、頭重感
- 不眠、過眠
- 食欲がない、食欲が増す
- 下痢や便秘
- 身体の痛み
- 肩こり
- めまい
- 耳鳴り
- 動悸
- 腰痛
- 生理不順 など
うつ病の治療
①しっかりと休養をとる
うつ病の治療の最優先は、休養をとれるようになることです。
うつ病の方は休むことに罪悪感を感じてしまい、「やらなければいけない」という気持ちから頑張り続けてしまうケースが多いです。
そのため、本当は休みたい、休んだ方がいいとわかっているのに動き続け、エネルギーが尽き果てている状態、たとえれば燃料のない自動車と考えることができます。
うつ病の方を頑張れと励ましてはいけないとされていますが、これは、燃料のない車で無理やり前に進もうとしている状態だからです。
そのため、体力と気力を回復できるように環境を整え、しっかり休養をとることが重要です。
お仕事や学校がある場合は、休職や休学するなどの配慮を行います。
家庭でやらなければならないことがある場合は、御家族に理解を得た上で家事負担を軽減してもらう必要があります。
家事やお仕事の負荷を減らし、睡眠や栄養をとることで、抑うつ症状の改善がみられる場合も多くみられます。
②うつ病の薬物療法
うつ病の症状は、意欲低下や憂うつ気分のほか、ほとんどの場合不安や睡眠障害を認めるため、様々な薬を組み合わせて使用します。
抗うつ薬
うつ病治療の主力となる薬で、脳内のセロトニンやノルアドレナリンという物質の作用を強化します。
気分の落ち込みや意欲低下、不安感などを軽減する働きがあります。
抗不安薬
不安や緊張、イライラを軽減する働きのほか、寝付きやすくなるよう眠気を起こしたり、強張った筋肉を緩めるリラックス効果があります。
睡眠薬
入眠できないときや、途中に何度も起きてしまうとき、熟睡感がないとき、朝方早く目覚めてしまうときに使用します。
漢方薬
抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬の服用に不安がある方は、漢方薬を選択される場合もあります。
漢方薬は味やにおいが独特ですが、依存性がないこと、抗うつ薬のような躁転(うつ状態から躁状態に転じること)がないことがメリットです。
一般的に漢方薬は効果は強くないものの、眠気などの副作用が少ないため、ゆっくり症状を改善したい方には適しています。
●補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
食欲がなく、だるくて疲れが取れない場合に使用します。体力が落ちていて気力がわかない場合に使用します。
●柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
動悸やイライラ、不安、不眠などに効果があります。嫌なことを思い出して眠れないような場合に使用します。
●半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
不安や緊張、不眠、動悸などの症状に使用します。のどが詰まるような感覚のある場合に効果があり、パニック障害の治療にも使用することがあります。
●酸棗仁湯(さんそうにんとう)
不安や焦燥感を伴う不眠の治療に使用します。疲れていても夜中に目がさえて眠れないような場合や、心配や悩みを考えすぎて眠れない場合に効果があります。
●加味帰脾湯(かみきひとう)
不安や緊張、イライラ感を鎮め、寝つきをよくする効果があります。眠りが浅く疲れやすい人に用いられます。
●加味逍遙散(かみしょうようさん)
更年期障害や生理不順、のぼせなどに女性に多い症状に用いる漢方薬で、不安やイライラ、怒りっぽい、肩こり、疲れやすい、頭痛、めまいなどに効果があります。
当院ではお薬に不安がある方にも丁寧な対応を心掛けています。
お薬の用量・用法や副作用をきちんと説明したうえで、患者様が希望された場合にかぎり必要最小限のお薬を処方するよう心がけています。
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